ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)とは、男性または女性に対して、「男らしさ」や「女らしさ」を求める嫌がらせのことを指します。
昔に比べると、性に関する考え方も多様化されてきました。
「男らしさ」や「女らしさ」を求める嫌がらせは減少しつつあるものの、こういった考え方をする人はいまだに多くいるのが現状です。
特に、職場では上司から部下に対して行われることが多く見られます。
こちらの記事では、ジェンダーハラスメントとはどのようなものなのか、その事例に触れながら、対処方法や解決方法について解説します。
ジェンダーハラスメントとは
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)とは、男性または女性に対して、「男らしさ」や「女らしさ」を求める嫌がらせのことを指します。
ジェンダーハラスメントの定義は、はっきりとは定義されていません。
ジェンダー(性別、性差)に関するハラスメント(嫌がらせ)として、男らしさや女らしさという物差しで人を判断する。
または、差別的な言動を浴びせたり、相手を非難したりすることを指しています。
よく、セクシャルハラスメントと混同して用いられがちです。
ですが、あくまでも性別や性差に関する差別的な言動や行動を指すため、性的な嫌がらせを指すセクハラとは意味合いが異なります。
しかし、性に関して差別的な考えがあたり前に行われるような職場もあります。
そのような場所では、職員間で男女差別の意識を生み出しやすく、セクハラの温床になる可能性が高いといえます。
このようなことが背景としてあるために、セクハラとジェンハラが混同されてしまう理由であると考えられます。
ちなみに、厚生労働省の平成25年改正では、性別役割分担意識に基づく行動(「男のくせにだらしない」「女には仕事は任せられない」などの言動)も、セクハラ発生の原因になる可能性があるとしています。
企業に対して、性差別による言動や行動は慎むように、労働者に周知するように呼びかけています。
ジェンダーハラスメントには、どのような事例があるのでしょうか。
ジェンダーハラスメントの事例
ここでは、ジェンダーハラスメントの事例について、男女別に分けてご紹介します。
女性の場合
- 女性にお茶くみなどの雑用をさせる
- 「女なんだから、それくらいできて当たり前だろ」と罵声を浴びせる
- 「女なんかにこの仕事ができるわけないだろ」と女性を非難する
- 「若いうちに結婚して、たくさん子どもを産むのが女の義務なのよ」と言う
- 「結婚したら(出産したら)家庭に入るのが当然よ」と言う
最後の2つの事例については、女性という性別に関しての差別的な発言だけではありません。
「なんで結婚しないの?」「結婚しているのにどうして子どもを産まないの?」などのマリッジハラスメントやマタニティハラスメントにも該当します。
男性の場合
- 男性に力仕事や現場仕事ばかり押し付ける
- 「男なんだから、率先して重いものを運ぶのは当然でしょ」と文句を言う
- 「男のくせにこんなこともできないなんて」と、できないことに対して男性を非難する
- 「男なのに、なよなよして、頼りないわね」と男性を非難する
- 「男なんだから、育休なんて取らずに、仕事をして家庭を支えるものだ」と非難する
最後の事例のように、男性だという理由で、育休を取るべきではないと差別的な考え方をされることも少なくありません。
こういった事例もジェンハラに該当します。
LGBTに関連した性差別も存在します
LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーのそれぞれの頭文字をとった略称です。
それぞれ、レズビアンは女性同性愛者、ゲイは男性同性愛者、バイセクシュアルは両性愛者、トランスジェンダーは、生まれた時の性別と自分で認識している性別が異なる人のことを指します。
LGBTに関連した性差別による言動や行動の事例は以下の通りです。
- 生物学上の性別は男性だが、性自認は女性であるため、女性の格好をしていったら「オカマ」と言われ、嫌がらせをされた
- 生物学上の性別と性自認は女性で一致しているが、恋愛対象は同性である女性だと言うと、気持ち悪がられた
- 性自認は女性でも男性でもないが、生物学的に女性であったため、上司である男性社員からセクハラを受けた
こういった事例は、職場だけにとどまらず、実生活においても多く見られます。
決して他人事だとは思わないように注意しましょう。
では、ジェンダーハラスメントの加害者にならないためにはどうすればいいのか、その対処方法についてみていきたいと思います。
ジェンダーハラスメントの対処方法
ここでは、ジェンダーハラスメントの加害者にならないための対処方法についてご紹介します。
女性なんだから、男性なんだから、という発言をしない
ジェンダーハラスメントは、性差別による言動や行動を行う嫌がらせのことを指します。
なので、「女性なんだから」「男性なんだから」という言葉を使わずに心がけるだけでも、差別的な発言をなくすための第一歩になります。
性別には関係なく、人として考えた時に、どうしてほしいか、どうしたらもっと良くなるのかということを意識して発言するように心がけましょう。
そうするだけでも、ジェンハラを予防することに繋がります。
発言する前に、言っていいことかどうかを考える
ジェンダーハラスメントをしている(加害者)側にとっては、無意識で言っていることが多いのが現状です。
そのため、自分が言おうとしている言葉を発してしまう前に、それを相手が聞いた時にどんな反応をするの想像することが大切です。
相手を傷つけることはないかを考えて発言するように心がけると、ジェンダーハラスメントを予防することができます。
性に関する知識を学ぶ
ジェンダーハラスメントには、LGBTに関しての差別的な発言も嫌がらせ行為に含まれます。
そのため、LGBTなどの性に関する知識を勉強して、差別的な認識をなくすように心がけることで、無意識に差別的な発言や行動をしてしまうことを防ぐことができます。
では、ジェンダーハラスメントはどうすればなくなるのか、その解決方法についてみていきたいと思います。
ジェンダーハラスメントの解決方法
ここでは、ジェンダーハラスメントを受けた場合の解決方法についてご紹介します。
直接、不快に思っていることを伝える
上記にも明記しましたが、ジェンダーハラスメントをしてしまう人のほとんどが、無意識に発言・行動してしまっている場合が非常に多いです。
そのため、発言・行動した内容が自分にとって不快であることを本人に伝えるようにしましょう。
そうすることで、ジェンハラに繋がるような言動や行動をしないように促すことができます。
信頼できる相手に相談する
ジェンダーハラスメントを受けていても、その相手が上司など上の立場の人だとすると、直接やめてほしいとは伝えにくいかもしれません。
その場合には、信頼できる上司や同僚に相談して、間接的ではあれど、加害者である本人に伝えてもらうようにするのが効果的と言えるでしょう。
社内の相談窓口に相談する
ジェンダーハラスメントから発展して、セクハラやマタハラ、マリハラなどの二次被害につながる可能性も考えられます。
その場合には、社内の相談窓口に相談し、社内で起こっているハラスメントの実情を会社に報告することが重要です。
しかし、ジェンハラのみの場合は真摯に対応してもらえない可能性も考えられます。
その場合にはそのやりとりを録音したり、日記などをつけて、言われたことやされたことを記録しておくと証拠として提出できるため、対応してもらいやすくなります。