テクスチュアルハラスメント(テクハラ)とは、文章を書いた人に対して性差別に当たる発言をしたり、作家に対して虚偽の噂を周囲に吹聴するような嫌がらせ行為のことを指します。
2001年に発売された「テクスチュアル・ハラスメント」という著書により、広く知られるようになったと考えられます。
主に、女性作家に対して行われる嫌がらせだと考えられているようですが、対象が男性作家であってもハラスメントは成立します。
こちらの記事では、テクスチュアルハラスメントはどのようなものなのか、その事例、対処方法や解決方法について解説します。
テクスチュアルハラスメントとは?
テクスチュアルハラスメント(テクハラ)とは、文章を書いた人に対して性差別に当たる発言をしたり、作家に対して虚偽の噂を周囲に吹聴するような嫌がらせ行為のことです。
ある文章に対し「女にはこんな文章は書けるわけがない」「男なのに女々しい表現ばっかり使う」などの性差別に当たる発言をすることです。
また、男性作家と名乗っているのに、裏では女性に書かせているに違いない、などの虚偽の噂を事実のように周囲に吹聴するような嫌がらせ行為はテクハラに該当します。
テクスチュアルハラスメントが知られるようになったのは、ジョアナ ラス(著)・小谷真理(翻)が執筆した著書「テクスチュアル・ハラスメント」が始まりだと考えられます。
こちらの著書の内容は、以下のように紹介されています。
これまで女性作家が受けてきた誹謗中傷と、作品を貶める手口を図式化したジョアナ・ラスの問題作How to Suppress Women’s Writingを全訳。新たに“テクスチュアル・ハラスメント”という視点を導入し、女性作家に対してなされてきたこれまでの批判そのものを、フェミニズム批評からとらえなおす小谷真理書き下ろし論考100枚収録。
また、テクスチュアルハラスメントは作家のみに該当するものだと思われがちです。
ですが、一般の方でも、テクチュアルハラスメントに該当するケースがあります。
例えば、職場での企画書やブログ運営などの執筆に関する内容に対して、性差別に当たるような発言をしたり、虚偽の噂を事実のように周囲に吹聴した場合です。
このような問題から、スキャンダルに発展したり、業務に支障が生じたり、利益や収入に影響することも少なくないため、訴訟問題に発展することもあります。
では、テクスチュアルハラスメントの事例は、ほかにどのようなものがあるのでしょうか。
テクスチュアルハラスメントの事例
ここでは、テクスチュアルハラスメントの事例についてご紹介します。
- 女性作家が書いた作品に対して、「この作品は、実は夫である男性が書いた作品であり、あたかも女性が書いたように公表している」と出版社が週刊誌に取り上げた
- サイトのホームページで、男性作家が女性視点で書いた内容の作品に対して、「男性作家のくせに、女性視点で女々しい文章を書いてる気持ち悪いやつだ」と誹謗中傷を書き込む
- 上司から頼まれた企画書を完成させて引き渡したところ、その上司が自分が作ったものだと偽って提出していた
- ある雑誌の記事に関して、「執筆者は女性だと書いているが、こんな論理的で綿密な文章は女性なんかには絶対に書けない」と批判する
作家が男性であるか、女性であるかを、書かれた文章によって判断し、性差別に当たる発言をする嫌がらせ行為。
スキャンダルやスクープなどの業務や利益に影響を及ぼすような虚偽の噂をあたかも本当であるかのように周囲に吹聴する行為。
大きく分けてこの2つが、テクスチュアルハラスメントに該当します。
では、テクスチュアルハラスメントはどうすればいいのか、その対処方法や解決方法についてみていきたいと思います。
テクスチュアルハラスメントの対処方法
ここでは、テクスチュアルハラスメントの加害者にならないための対処方法についてご紹介します。
性差別に当たるような発言をしない
ある作家に対して、個人的な感想を抱くこともあるでしょう。
例えば、「女性作家なのに、こんな中身の充実したもの(作品)が書けるわけがない」「絶対、執筆しているのは男性だ!」と思っても、それは個人の自由です。
しかし、それをあたかも本当のように、「この作家は男性であるにも関わらず、女性作家と偽って書いている!」とネットに書き込む行為。
出版社にスクープとして持ち込んだりする行為は、テクスチュアルハラスメントになります。
中には、確かに本来の性別を隠して、性別を偽って執筆活動を行っている作家も存在します。
しかし、それには作風のイメージを壊したくない、などという理由があります。
女性作家が書いているとした方が、印象が良いなど、様々な理由が存在していることも事実です。
そのことが事実だという確証があってもなくても、当人の事情を踏まえず、周囲に吹聴して回ると、それは嫌がらせ行為になり、迷惑行為でもあります。
そのため、むやみやたらに情報をネットに書き込んだり、出版社に持ち込むなどの行為はしないようにしましょう。
そうすることで、ハラスメントの加害者になることを防ぐことに繋がります。
確証のないことを言いふらさない、ネットに書き込まない
上記の内容と同様ですが、性差別に当たる内容のものではなくても、「この作家は、自分が書いていると偽って、実は別の人物に書かせている」「それを自分の作品だと偽装している」などと虚偽の情報を吹聴して回る行為も、ハラスメントに該当します。
確証のないこと、または確証があったとしても、他人の事情を考えずに情報を吹聴して回る。
それが事実であるかのように言いふらすことは、明らかに嫌がらせ行為であり、迷惑行為でもあります。
そのため、そういった行為はしないようにすることで、ハラスメントを防ぐことができます。
他人の成果を横取りしない
職場での嫌がらせ行為として、よく見られるテクスチュアルハラスメントかもしれません。
部下に依頼し作成してもらった企画書を、あたかも自分が作成したように偽り上司に提出するなど、他人の成果を横取りするような行為です。
このような行為は、ハラスメントだという前に、人として行ってはいけない行為ですよね。
仕事をサボり、自分の出世のためだけに他人を利用し、それをあたかも自分のものにしようとすることに労力を注いでも意味がありません。
それよりも、会社のために自分自身が努力した成果を積み重ねていく方が、確実に出世につながります。
そして、上司や部下からの信頼も得られるでしょう。
誰かを下げて、無理矢理に自分を上げようとしても、いつか自分に返って来るだけなので、そういった行為はしないようにしましょう。
つぎに、テクスチュアルハラスメントの解決方法についてみていきたいと思います。
テクスチュアルハラスメントの解決方法
ここでは、テクスチュアルハラスメントをなくすための解決方法についてご紹介します。
社内の相談窓口に相談する
職場でテクスチュアルハラスメントが起こった場合には、まずは社内の相談窓口に相談してみましょう。
職場でハラスメント行為が行われているという事実を会社に周知すること。
または、信頼のできる上司などにハラスメントを報告することで、加害者である当人に対して注意してもらえます。
それにより、現状が改善する可能性も高まります。
また、社内の相談窓口に相談する場合には、自分が作成したものであることを証明できるものを持参して相談しましょう。
より早く対処してもらいやすくなります。
ハラスメント差止要求書を送付する
テクスチュアルハラスメントは、名誉棄損に該当する可能性が高いハラスメントです。
そのため、ハラスメントに該当するという旨の内容や違法性を明記した上で、ハラスメント差止要求書を会社宛に送付しましょう。
一度目は普通郵便で送付で構いませんが、それでも反応がなかった場合には、内容証明郵便を送付しましょう。
内容証明郵便で送付すると、郵便局が送った書面の内容を証明してくれるので、裁判でも有効な証拠として提出することができます。
労働審判・民事調停で話し合う
ハラスメント差止要求書を送付しても、加害者側から問題解決のための行動を起こさなかった場合もあるかもしれません。
その場合、会社内であれば労働審判、個人間の場合は民事調停で、解決のための話し合いを行います。
話し合いの結果、思うような進展が得られなかったり、話し合いが成立しない場合には、通常であれば裁判に移行します。
裁判を行う
テクスチュアルハラスメントによって裁判に発展した場合には、損害賠償請求や名誉棄損などの刑事事件として訴えることになります。
会社内でのトラブルというより、個人間のトラブルとして解釈されます。
また、裁判に発展するまで改善が見込めない場合には、早い段階で弁護士に相談しておくことが重要です。