ドクターハラスメント(ドクハラ)とは、医師や看護師などの医療従事者が、患者もしくは患者家族に対して、不信感や不安感、不快感を抱くような言動や行動を行う嫌がらせのことを指します。
普段、風邪などの病気を治すため、もしくは体調不良などの原因を明らかにし、心配を減らすために病院を受診します。
それにも関わらず、医師や看護師から、無神経な発言や配慮のない行動をされると、嫌な気持ちになったり、腹立たしく感じてしまいますよね。
こちらの記事では、ドクターハラスメントとはどのようなものなのか、種類や事例、対処方法、解決方法について解説します。
ドクターハラスメントとは?
ドクターハラスメント(ドクハラ)とは、医師や看護師などの医療従事者が、患者もしくは患者家族に対して、不信感や不安感、不快感を抱くような言動や行動を行う嫌がらせのことです。
ドクターハラスメントとは、ドクター(医者)とハラスメント(嫌がらせ)を合わせた和製英語になります。
このドクターハラスメントの名付け親であり、この言葉を最初に使用したのは、帝京大学出身の外科医・土谷繁裕医師だと言われています。
土谷医師は、医療現場で行われている無神経な言動で患者を傷つけている現状を問題視し、批判するなど、メディアで積極的に訴えかけました。
また、日本医師会では、2006年から2007年の約1年間、ドクターハラスメントを題材にしたテレビCMを放送しました。
その際、患者が実際に医師から言われた言葉をテロップで流すなど、ドクターハラスメントをなくすための活動が行われていました。
では、ドクターハラスメントにはどのような事例があるのでしょうか。
ドクターハラスメントの種類と事例
ここでは、ドクターハラスメントの種類と事例についてご紹介します。
まず、ドクターハラスメントの種類について見ていきましょう。
ドクターハラスメントの種類
Wikipediaでは、ドクターハラスメントの医師を12種類に分類しています。
ドクハラ医師の12種類とその詳細について、簡潔にまとめました。
- 医師失格型…サディスティックに患者の心を傷つけ、無力化・孤立化を狙う
- ミスマッチ型…患者の状況を理解せずにちぐはぐな言動をする
- 脅し型…知識の差を盾にし、脅して治療に服従させる
- ゼニゲバ型…患者の治療や回復よりも病院の利益を優先する
- 子どもへのドクハラ型…子ども自身や、子供の治療時に親に向かって行う
- セクハラ型…産婦人科などで女性を傷つけるドクセクハラ
- 告知型…患者やその家族を絶望に淵に突き落とす
- 勘違い型…妄信的な患者さんが増えると自己満足する
- 混合型…情報開示後の民間会社からの応答を拒否する
- 勉強不足型…海外渡航の診断書を書けない
- 乱反射型…紹介状を作成するのに時間をかけない
- 逃走型…自分の都合主体で転勤する
(Wikipediaから一部抜粋)
このようにまとめて見てみると、少し理解しがたいものも混じっていますね。
特に、後半の勘違い型や混合型、乱反射型などは理解しがたいと思います。
わかりやすくいえば、
- 勘違い型…自分の都合の良いように解釈する癖がついているため、妄信的な患者さんがいると自分は優秀だと勘違いしたり、自分のせいで犯した間違いを自己責任だと感じず、見て見ぬふりをする
- 混合型…患者の交際相手を容認しなかったり、情報開示後の民間会社からの応答を拒否することから考えると、仕事上とプライベートを混合しているか、もしくは業務上必要なことを自己都合のやり方で捉え、必要がないと混合している
- 乱反射型…紹介状を作成するのに時間をかけないことから考えると、業務上必要である作業を時間をかけずに大雑把に行うことで、記入ミスや情報間違いなどを引き起こし、その影響を多岐にまで広げる
それぞれ、上記のような医師のことを指していると考えられます。
ドクターハラスメントの事例
ここでは、ドクターハラスメントの事例についてご紹介します。
面倒そうな表情や態度、口調で患者に接する【医師失格型】
治療をしてもらおうと診察室に入った際に、まずはドクターの顔を見ると思います。
その時に、挨拶もなく、明らかに面倒そうな顔をしたり、早く帰ってほしそうな雰囲気を出しながら対応されたら、気分が悪いですよね。
患者が症状が出るまでの過程を話している段階で、「いや、それはいいから、どんな症状があるの。」と結論を急かす。
面倒そうな姿勢や態度で話を聞いて、「あぁ、その症状なら風邪だろうから薬出しとくね。はい次の方~。」と矢継ぎ早に対応する。
上記のような対応をされると、本当に大丈夫なのかと不信感を抱く原因になり、しっかりと聞き取りをしてもらえなかった不満も溜まります。
このように、患者に対して不安感や不信感を抱かせるような表情、態度、雰囲気、言動を行うこともドクターハラスメントに該当します。
相手を見下すような発言や態度をとる【医師失格型】
問診や検査を終えた後、医師から検査結果や治療方法を聞く場面も多々あります。
そのさい、聞きなれない言葉や、わからないことが出てくることもあると思います。
それらに対して疑問を持ち、医師に質問をすることは普通です。
しかし、患者からの質問に対して、「学校でちゃんと勉強してきたの?」「時間ないんだから一回で理解してくださいよ。」と患者を馬鹿にするような発言を行う医師がいます。
また、経過観察のため、再診に来た患者の診察後、改善が見られなかったことに対して責めるような発言をするドクターもいます。
たとえば、「全然改善しないね。」「あれだけ言ったのに、改善しないなんて治す気あるの?」などです。
これらも、立派なドクターハラスメントです。
思いやりのない発言をする【ミスマッチ型】
不慮の事故などで片目が失明してしまって落ち込んでいる患者に対して、「片目が無事で良かったじゃない。」と言う。
子宮がんなどの病気で子宮を摘出しなければならない女性に対して、「もう子どもは作らないだろうから、子宮はいらないでしょう。」と言う。
これらの、配慮がなく、思いやりに欠ける発言もドクターハラスメントに該当します。
医師は悪気がなくても、言われた側の患者からすれば、非常にデリカシーのない発言です。
これらは、ハラスメントだと受け取られる可能性が高いので、注意してほしいところですね。
説明もなく、治療方法を勝手に決めて進めようとする【脅し型・ゼニゲバ型】
病気の治療方法に関して、明確な説明を患者にしないまま、医師の都合の良いよう、話を勝手に決めて進めようとすることも、ドクターハラスメントに該当します。
そもそも、私利私欲のために治療方法を勝手に決めるのも許しがたい行為です。
ですが、病院の利益のことだけを考えて、患者の今後の回復や見通しを考慮せずに高額な治療方法を選び、押し付けることも現状として少なくありません。
ましてや、「この治療をしなかったら死ぬぞ。」「他の患者と同じように死んでいくことになるけど、いいんだね?」と脅すことも、医師として許しがたい行為といえます。
子どもに対して、威圧感を出したり、怖がらせるようなことを言う【子どもへのドクハラ型】
入院中の子どもがご飯をちゃんと食べずに残している場合に、「ちゃんと食べないと死んじゃうよ。」とわざと怖がらせる。
子どもが病院内で暴れているのを止めようとして、「静かにしないと注射するぞ。」などと言って威圧することもドクターハラスメントに該当します。
また、治療を怖がって拒否する子どもに対して、「言うことを聞かないと、一生治らないぞ。」と威圧感を出して有無を言わせない。
または、言うことを聞かせようとすることも、ドクターハラスメントに該当します。
子どもを持つ親に対して、必要のない批評をする【子どもへのドクハラ型】
子どもが自分の症状について説明を聞いた後に、別室で母親に「あの子の言うことってどうせ嘘なんでしょ?愛情不足でも痛いって言いますよね。」と言う。
子どもの病気のことを「母親がこんなんだから子どもが病気になるんだ。」と言ったりすることもドクターハラスメントに該当します。
親に関しては、虐待や育児放棄(ネグレクト)などの問題がある場合には、もちろん注意喚起をすることも大切です。
ですが、上記のような発言は、必要のない批評といえます。
検査結果や治療方針、経過観察のための配慮事項等について説明する以外には、必要のない批評となります。
女性に対して、性的なことを匂わせる発言をする【セクハラ型】
これは産婦人科で起こることが多いセクハラ型の事例になります。
乳がん検診などで胸を触診する場合に、「おっぱい大きいね。」と言う。
検査の結果、性病だと発覚した女性に対して、「むやみやたらと遊んでるから、こんな病気をもらってくるんだよ。」と言ったりする。
女性への配慮がなく、性に関することを言うこともドクターハラスメントに該当します。
また、子どもを流産したり、死産になってしまった妊婦に対して残酷な言葉を浴びせることもドクターハラスメントに該当します。
たとえば、「あー。心臓動いてないから、もう死んでるね、これ。」「この子、男の子だったね。」など、
配慮もなしに残酷な言い方をする【告知型】
回復の見込めない患者や、その家族に対して余命宣告を行う場合には、少なからず、告げる場所や伝え方にも配慮が必要ですよね。
しかし、そのようなことを考えもせず、残酷な言い方で伝えることもドクターハラスメントに該当します。
たとえば、「もうすぐ死ぬよ。これだけ生きれたんだから十分長生きしたよ。」「あと、もって一年だね。これでも長い方だよ。」などです。
また、少しでも長生きできる可能性があるなら、延命するための治療をしてほしいと希望する患者家族もいるでしょう。
その人たちに対して「どうせ治らないんだから、治療なんかしても無駄ですよ。」とデリカシーのないことをいうことも、ハラスメントに該当します。
では、ドクターハラスメントを受けた場合どうすればいいのか、その対処方法についてみていきましょう。
ドクターハラスメントの対処方法
ここでは、ドクターハラスメントを受けた場合に、個人でできる対処方法についてご紹介します。
自分の意見をしっかりと医師に伝える
診察を受ける際には、説明を聞いている中で疑問に思ったことや治療に対する不安など、思ったことをはっきりと医師に伝えることが重要です。
ドクターハラスメントをする医師の多くは、自分の行いがハラスメントに該当するという自覚はありません。
そのため、患者側がしっかりした態度や言動を取ることで、上から目線をやめて対応してくれるようになる可能性も十分にあります。
医師からの態度や言動に惑わされず、疑問に思ったことや間違っていると思ったことに対しては、堂々と伝えるようにしましょう。
セカンドオピニオンを受けることを考える
患者には、病院を選ぶ権利があります。
また、医師からの診断や治療方針に関して、不安に思う点や疑問点があり、信用できないと感じた場合には、病院を変えましょう。
そして、別の信用できる医師に診察してもらうことで、不安を解消することができます。
ドクターハラスメントを受け、不満を抱いている状態で、無理に治療を行い続ける必要はありません。
自分の心と身体を守るためにも、我慢し続けるのではなく、自分が気持ち良く通院でき、なおかつ治療に専念できる病院と医師を探すことが重要です。
自分の病気のことを知っておく
ドクターハラスメントが起こる原因の一つとして、患者側の医療知識のなさに胡坐をかいて、自分が一番偉いと誤解している場合も少なくありません。
そのため、以下のような、自分で得られるだけの情報は自分で勉強して、把握しておくことが重要です。
- 自分の病気がどんな病気であるのか、
- どんな治療が有効であるのか、
- 病症の原因はなんなのか、
- 何のために検査をしたのか、
- 治療法によってどんな効果が得られるのか
そうすることで、病気に関しての知識が身に付きます。
そして、医師から説明を受けた際に、「何がおかしいのか」「どの説明を省かれているのか」に気付くことができます。
つぎに、ドクターハラスメントの解決方法についてみていきましょう。
ドクターハラスメントの解決方法
ここでは、ドクターハラスメントを受けた際の解決方法についてご紹介します。
ドクターハラスメントを受けた場合には、どこに相談するのがいいのでしょうか。
どこに相談するのが良いのか?
厚生労働省に相談する
医師に医師免許を発行し、免許取得後の医師の管理や病院の監査の指示を行っているのが厚生労働省です。
厚生労働省の管轄の中には、「医療安全支援センター」という施設が全国に設置されています。
こちらの施設では、ドクターハラスメントの相談を受け付けています。
それ以外にも、医療に対する苦情や心配事など、医療問題に関することであれば、幅広く対応してくれます。
また、問題解決のために、必要な関係機関との連携もしてくれます。
医療問題に関することで困った際には、一番に相談するのも解決方法として有効な手段といえます。
医療問題を扱っている機関に相談する
医療問題を扱っている機関として挙げられるのは、市民団体やNPOです。
団体によって扱っている問題の種類が異なります。
なので、自分がどのような問題を抱えているかによって、どの団体に相談すればいいかは自分で判断しなければいけません。
ですが、管轄の範囲内であれば、その分親身になって対応してもらえるのでおすすめです。
相談する時に証拠として提出できるもの
病気の経過や疑問点をまとめておく
自分の病気の経過や、治療を行う中で感じた疑問点などをノートなどにまとめておきましょう。
そうすることで、現在どのような治療を受けていて、どのようなことを疑問に思っているのかなど、自分の状況について客観的に把握することができます。
そうすることで、短時間の診察であったとしても医師にスムーズに質問することができますし、聞きこぼしをなくすことができます。
また、ドクターハラスメントを受けた時の詳細なども記録に残しておくと証拠として提出することができます。
簡単なメモ程度にでも残しておくと、いざという時に安心です。
医師とのやりとりを録音する
医師とのやりとりを録音しておくことで、ドクターハラスメントの重要な証拠にすることができます。
また、証拠を集める以外にも、治療についての説明を受ける前に、事前に医師に録音することを伝えることで、ハラスメントを予防することに繋がります。
医師との会話を録音しておくことで、証拠集め以外に、治療に関する重要な説明を聞き逃すことを防ぐことができます。
家に帰った後なども、自分で治療内容を振り返ることができるので、理解しないままに治療を進めるという事態を防ぐことができます。