育児ハラスメント(イクハラ)とは、育児をする中で、職場で働く上で取得できる権利に対して不当な扱いを受けたり、育児に関して、文句や悪口を言われたりするなどの嫌がらせのことを指します。
数多くあるハラスメントの種類の中で、育児ハラスメントは、職場で見られることは多々あるものの、実は、日常的に起こりうるハラスメントであるといえます。
こちらの記事では、育児ハラスメントとはどのようなものなのか、事例に触れながら、対処方法と解決方法について解説します。
育児ハラスメントとは
育児ハラスメント(イクハラ)とは、育児をする中で、職場で働く上で取得できる権利に対して不当な扱いを受けたり、育児に関して、文句や悪口を言われたりするなどの嫌がらせのことを指します。
育児ハラスメントは、マタニティハラスメントの一種です。
マタハラが、妊婦や育児に関する嫌がらせであるのに対して、育児ハラスメントは、マタハラに含まれている育児に関しての嫌がらせのみを意味しています。
育ハラには、明確な定義がありません。
そのため、区別が難しいところもありますが、妊婦に対しての嫌がらせは含まれないので、そこを勘違いしないように注意しておきましょう。
育児ハラスメントには、どのような事例があるのかみていきたいと思います。
育児ハラスメントの事例
ここでは、育児ハラスメントの事例について、職場と日常の場合とに分けて、ご紹介します。
職場の場合
- 育児休暇を申請したにも関わらず、「1年も休まれると困る!」「そんな無責任な社員はいらない!」と退職させられた
- 子どもがいるので時短勤務をしていると、上司や同僚など、周囲から冷たい視線で見られたり、悪口を言われた
- 子どもが熱を出したので会社を休むと連絡したら、「これだから子どもがいると困るんだ」と文句を言われた
職場での育児ハラスメントは、働きながら育児をしている、主に母親に対して行われることが多く見られます。
育児休暇は、労働者の権利として取得することができます。
しかし、人員が減ること、減った分の仕事を負担しないといけなくなるという背景から、申請した人に育児休暇を取得させないことがあります。
最悪の場合、そこから退職に追い込むというケースも。
これらは、育児ハラスメントに該当します。
また、退職まではいかなくとも、育児中の時短勤務や有休の使い方に対して、労働者の同意なく、一方的に人事異動を言い渡す場合も、育ハラに該当します。
日常の場合
- ベビーカーを引いていると、後ろから「ちんたら歩いてないで、さっさと行ってくれ」と文句を言われた
- 大きなマザーズバックを抱えていると、側にいたおじさんにうっとうしいとばかりに睨まれ、「邪魔だ!」と罵倒された
- 赤ん坊が泣き止まないので邪魔にならないように端の方であやしていると、「なんでこんなところに連れてくるんだ」と嫌そうな顔で言われた
職場だけでなく、日常生活を送る中でも、育児ハラスメントはみられます。
育児をしている親や子どもに対して、何気なく、嫌そうな顔をしたり、文句や悪口を言ったりしている場面も少なくありません。
相手を不快な気持ちにさせるような行為は、嫌がらせ行為だと受け取られるため、育児ハラスメントに該当します。
育児ハラスメントの加害者にならないためにはどうすればいいのか、対処方法についてみていきましょう。
育児ハラスメントの対処方法
ここでは、職場において、育児ハラスメントの加害者にならないための対処方法についてご紹介します。
助け合いの精神が大切であることを意識する
育児をしている人達のフォローをするのは、やはり、育児をしていない人が中心になります。
本来の自分の仕事から、他人の人の仕事も請け負うわけですから、その分、業務量が増えたり、残業したりといった負担も増えてしまうのは事実です。
しかし、育児をしている人達も、わざと休んでいるわけではありません。
育児をしていない人達であっても、体調を崩したり、家族が倒れたりするなど、どうしても働けない状況になることもあります。
その際には、また別の人が自分のフォローをしてくれるようになっています。
なので、自分一人が良ければそれで良い、という意識はやめるようにしましょう。
お互いがフォローし合えるように、困った時は全員で助け合うという助け合いの精神を持つことが、ハラスメントの加害者にならないための第一歩といえます。
職場環境の改善を求める
業務量が増えると、忙しさから精神的余裕がなくなってしまい、イライラしてしまうこともあるでしょう。
そして、つい「誰かさんのせいでまた仕事が増えた」「子どもがいると時短勤務ができていいよな」と思ってしまうかもしれません。
しかし、それを口に出したり、嫌そうな態度をとってしまうと、その行為はハラスメントに繋がってしまいます。
現在の従業員数で、仕事が回せないような状態になってしまう根本の原因は、職場環境が悪いことが要因となっている場合が多いです。
そのため、職場環境の改善について、上司に相談することや、社内の相談窓口に相談することも、ハラスメントの加害者にならないための対処方法といえます。
では、育児ハラスメントはどうすればなくなるのか、解決方法についてもみていきたいと思います。
育児ハラスメントの解決方法
ここでは、職場において、個人でできる、育児ハラスメントをなくすための解決方法についてご紹介します。
信頼できる人に相談する
育児ハラスメントを受けている親は、職場では特にそうですが、ハラスメントを受けていても我慢してしまう傾向にあります。
嫌なことは嫌だ、おかしいことはおかしい、とハラスメントをしている本人にはっきり伝えることが一番です。
ですが、立場上言いにくい面もあるかと思います。
そうなった場合には、一人で抱え込むのではなく、まずは信頼できる人に相談して、悩みを軽くすること、事情を知ってもらうことが重要です。
そうすることで、一人で抱え込むことがなくなり、信頼できる人から、間接的にそれとなく嫌だと感じていることを伝えてもらうことも可能になります。
社内の相談窓口に相談する
社内にハラスメント専用の相談窓口がある場合は、一度、相談してみましょう。
社内でどのようなことが起こっているのか、現状を報告することは労働者の義務です。
そして、会社にも周知する必要があるので、躊躇わずに相談することが重要です。
また、ハラスメントをされていることを証明するために、ハラスメントをされた日にちや出来事を日記に書いたり、日頃のやりとりを録音しておくといいでしょう。
ハラスメントの記録をとっておくと、証拠として提出できるので、より早く対処してもらいやすくなります。
労働局の総合労働相談コーナーを利用する
本来、育児ハラスメントやマタニティハラスメントなどの妊婦や育児に関するハラスメントに関しての対策を行うことは、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法によって義務付けられています
そのため、実際に職場で起こっているハラスメントの改善が見られなかったり、防止措置が不十分である場合は、法律違反となります。
しっかりと対応するように会社に促すためにも、一人で抱え込まずに、ハラスメント被害を訴えることが重要です。
助けてもらっていることへの配慮も大切
- 感謝の気持ちを忘れずに伝えるようにする
- 周囲に助けてもらいやすくするために、自身の抱える仕事内容を透明化しておく
- 限られた時間内で、自分にできる仕事量を明確にしておく
- できないと思ったら、早いうちから上司に相談する
上記のような例はほんの一部ですが、働くママやパパにとって、仕事のフォローをしてくれているのは、やはり職場の上司や同僚、部下などの人たちです。
助けられていることを改めて自覚し、その人達への感謝の気持ちを忘れないようにすること、意識して配慮を行うように心がけることも重要となります。
最後に
育児ハラスメントを受けている、特に働いている母親は、子どものために休まないといけないことに責任を感じています。
職場で「子どもを理由にして、休めていいわね」や「誰が、仕事のフォローをしてやってると思ってるの」というような嫌がらせ行為を受けることもあるでしょう。
ですが、自分の代わりに仕事をお願いするという責任感から、我慢してしまう傾向にあります。
嫌がらせ行為を我慢して受け続けた結果、うつ病に発展してしまうケースも少なくありません。
そのため、ハラスメント被害を受けている場合は、我慢せずにまずは相談することが重要です。
また、育児をしている人達、それをフォローする人達みんなが働きやすい職場を作っていくこと、環境の改善を図ることも重要ですね。