ヒアリングハラスメントとは、ヘッドフォンによる騒音性難聴やストレスによる突発性難聴など、「聞こえにくい」ということに対しての理解不足や配慮のなさから行われる嫌がらせ行為のことを指します。
今までにも聴覚障害の人に対しての理解不足が問題となっていました。
ですが、それに対するさらなる理解と、配慮を求めるための行動を実際に起こしたのは初めてなのではないでしょうか。
こちらの記事では、ヒアリングハラスメントとはどのようなものなのか、その事例や解決方法についてご紹介します。
ヒアリングハラスメントとは?
ヒアリングハラスメントとは、ヘッドフォンによる騒音性難聴やストレスによる突発性難聴など、「聞こえにくい」ということに対しての理解不足や配慮のなさから行われる嫌がらせ行為のことを指します。
数多くあるハラスメントの中で、最近新たに知られるようになったハラスメントが、ヒアリングハラスメントです。
少子高齢化に伴い、高齢者の数も益々増加の一途を辿っている中で、難聴に悩む方も増加すると予想されています。
難聴などの「聞こえづらさ」は、見た目にはわかりづらいです。
そのため、聞こえているだろうと捉えられることが多く、それによって「え、なんでわからないの?」や「いやいや、ふざけないでよ」と非難されることも少なくありません。
こういった「聞こえ」による理解不足や配慮のなさから行われる対応を「ヒアリングハラスメント」と名付けられました。
そして、難聴などによって起こる「聞こえづらさ」に対してのさらなる理解と配慮を求める活動を開始しています。
特に、高齢者とのコミュニケーションが密に行われる医療機関や介護施設での「聞こえ」の問題に焦点を当てた取り組みが重視されています。
それ”ヒアハラ”?「聞こえにくい」に理解と支援を
見出しにも挙げましたが、西日本新聞では10月19日(土)8:32頃、ヒアリングハラスメントの周知を図ること、高齢化に伴って早急な対応が必要であることを求めた記事が掲載されました。
内容は下記のとおりです。
難聴の人に対し、耳元で大きな声で話したり、マスクをしたまま対応したり。「聞こえ」に対する理解不足や配慮のなさを「ヒアリング・ハラスメント」(ヒアハラ)と名付け、なくそうという動きが広がっている。難聴者数は人口の約1割と推計され、高齢化によって今後も増加が見込まれており、早急な対策が求められる。
9月中旬、動画投稿サイト「ユーチューブ」で難聴と認知症をテーマにした短編映画「気づかなくてごめんね」が公開された。
俳優の石倉三郎さんが演じるのは、家族と話さなくなり、近隣でトラブルを起こすようになった高齢の男性だ。周囲からは認知症だと思われていたが、実は難聴。対話支援スピーカーを使って再び意思疎通ができるようになり、笑顔を取り戻すストーリーだ。
「聞こえ方は人それぞれ」
映画はNPO法人日本ユニバーサル・サウンドデザイン協会が制作。同団体は昨年「ヒアリングハラスメント・ゼロ推進委員会」を立ち上げ、医療機関や介護施設で聴覚についてのセミナーを開いており、啓発活動の一環で企画した。理事長で、広島大宇宙再生医療センターで聴覚の研究をする中石真一路(しんいちろう)さん(46)は「難聴と知ると大きな声で対応する人が多いが、聞こえ方は人それぞれ。たとえば加齢による難聴は感音性難聴が多く、大きな音はひずんで余計聞こえない」と指摘する。
家族や手話通訳者と話すといった対応もヒアハラに
聴覚障害は見た目では分かりづらい。会話の内容が聞き取れずにコミュニケーションが分断されて孤立してしまうほか、学校の授業についていけなかったり、認知症と誤解されたりするケースも少なくない。中石さんは「聞こえにくい側に障害があるのではなく、聞こえについての理解や支援のない社会が障壁を生み出している」と指摘する。聞こえないと決めつけ、家族や手話通訳者と話すといった対応もヒアハラに当たる。会は、聞こえにくい人とのコミュニケーションでは、マスクを外し相手を見て話す▽口を大きく開け、文節で区切ってゆっくり話す▽筆談を併用する▽対話支援スピーカーなどの機器を活用する-といった対応を呼び掛け、動画にして合わせて公開中だ。
NPO法人北九州市難聴者・中途失聴者協会の神矢徹石(てつじ)理事長は「ヒアハラの中には本来なら差別に該当するものもあるが、現状は社会が差別に対して無自覚になっている。ハラスメントという表現を使うことで、社会に意識付けるきっかけになるのではないか」と話している。
(西日本新聞)
ヒアリングハラスメントは、パワハラやセクハラほどに周知されているものではないものの、昨年から「ヒアリングハラスメント・ゼロ推進委員会」で医療機関や介護施設での聴覚についてのセミナーが開かれていることや、今回の短編映画の製作・公開されたことによって、ますます世間に広く知られることとなるハラスメントといえます。
こういった活動の中で、これから迎える超高齢化社会に向けて、難聴などの聴覚障害がある人たちが抱えている「聞こえづらさ」において、私たちも正しい理解や適切な対応を心がけていきたいですね。
では、ヒアリングハラスメントにはどのような事例があるのでしょうか。
ヒアリングハラスメントの事例
ここでは、上記の記事や動画を参考に事例を紹介したいと思います。
ヒアリングハラスメントに該当する対応
- マスクをつけたままの状態で話す
- 早口で話す
- 必要以上に大きい声を出して話す
- 対象者に話しかけることなく、家族や手話通訳者に話をする
最後の2つに挙げられている対応に関しては、耳が聞こえづらい人に対して、良かれと思って何気なく行っているものですよね。
しかし、実際に耳が聞こえづらい人に対しては、上記のような対応を取ることで、かえって不快な思いをさせてしまう可能性もあります。
上記の対応が適切でない理由は、解決方法とともに記載いたします。
対象者とのすれ違いを起こさないためにも、聴覚障害を抱えている人たちへの適切な対応を頭に入れておきたいですね。
その他にも、ヒアリングハラスメントに該当する対応はあるのでは?
上記に挙げたものは、定義の通り、難聴などの聴覚障害を抱えている人たちに対しての理解不足や配慮のなさから行われている対応ですよね。
しかし、ヒアリングハラスメントに該当するものは、理解不足や配慮のなさから行われる対応以外にもあると思います。
例えば…
- (難聴者に)何度も「え?」と聞き返し、言い直しを要求する
- 喋っていることに対して、聞こえづらさを感じさせる不快な顔をする
- 突然、後ろから難聴者に触れる、またはぶつかって驚かせる
- (難聴者が)何度も言い直しを要求することに対して、文句を言う
これらのように、難聴者に対して、ハラスメントの意味である”嫌がらせ”行為もヒアリングハラスメントに含まれるのではないでしょうか。
そんなヒアリングハラスメントの加害者にならないためにはどうすればいいのか、解決方法についてみていきましょう。
ヒアリングハラスメントの解決方法
ここでは、ヒアリングハラスメントの加害者にならないための解決方法についてご紹介します。
上記の記事を参考に、上記の対応がヒアリングハラスメントに該当する理由も含めて、整理していきたいと思います。
マスクを外し、相手の方を見て話す
耳が聞こえづらい人は、相手の口の動きを見て、大体の話の内容を予想して話を聞いています。
ですので、マスクをつけているとそれらを確認することができません。
そのため、耳が聞こえづらい人と話をする時は、マスクを外して、相手に口の動きを見せることができるように、相手の方を向いて話をすることが重要です。
また、聞こえづらさの程度は人それぞれです。
聞き取りやすい音も人によって違うので、必要以上に大きい声を出して話すことは、その人にとってはかえって聞き取りづらい可能性があるので注意しましょう。
口を大きく開け、文節で区切ってゆっくり話す
上記にも挙げましたが、耳が聞こえづらい人は、相手の口の動きを見て話を聞いています。
そのため、口の動きが相手に見やすいように、口を大きく開けて、文節で区切ってゆっくり話すように心がけると何を話しているのかが伝わりやすくなります。
早口で話すことも、口の動きが小さくなりやすく、話の内容を予想することが難しくなるため、注意しましょう。
筆談を併用する
上記の方法を心がけることも重要ですが、正確に読み取ることができない場合もあります。
そのため、筆談を併用して話すことで、より正確に話の内容を伝えることができます。
対話支援スピーカーなどの機器を活用する
耳が聞こえづらい人自身が行う対策として、補聴器を使用することは世に知られていますが、補聴器を使うことを嫌がる人も少なくありません。
対話支援スピーカーは、2013年12月から本格的に受注・生産が開始された製品です。
健聴者が発している音声を難聴者が聞こえやすい音声に変換して音を発信することで、健聴者および難聴者の負担を減らすために開発されました。
そのため、「聞こえづらさ」を軽減するための対策として、現在では補聴器よりも対話支援スピーカーを推奨する声が上がってきています。
ヒアリングハラスメントをなくすためには、どうすればいいのでしょうか。
ヒアリングハラスメントをなくすには
ヒアリングハラスメントをなくすための方法について紹介します。
ヒアリングハラスメントをなくすためには、難聴などの聴覚障害を抱えている人が持つ「聞こえづらさ」に対しての理解を深めること、適切な配慮の仕方を学ぶことが必要不可欠です。
健常者にとっては良いと思って行った対応が、かえって相手にとっては不快だと思わせてしまう対応だったらとても悲しいですよね。
少しでも早く、ヒアリングハラスメントが周知され、難聴者への正しい理解と適切な配慮ができるようになり、難聴者と健聴者とのすれ違いがなくなればいいですね。