スクールハラスメント(スクハラ)とは、学校内で行われるいじめや嫌がらせ行為のことを指し、セクハラ・パワハラ・モラハラなどのハラスメントの総称のことをいいます。
大抵の場合は、立場が上の者から下の者へ行われることが多く、教師と生徒の場合に該当することが多いとされています。
それ以外にも、教師同士、生徒や児童同士で行われた場合もスクールハラスメントになります。
ここでは、スクールハラスメントが問題となった背景に触れながら、ハラスメント別の事例や対処方法、解決方法についてご紹介します。
スクールハラスメントが問題となった背景
スクールハラスメントが問題となった背景として、ニュースなどで取り上げられる機会が増加したことが要因といえます。
例えば、生徒に対するセクハラが原因で懲戒免職になった中学校教師の数が、1999年には3人であったと報告されています。
それが、なんと2012年には199人にまで増加してしまいました。
結果、10年ほどで、スクールハラスメントを犯した中学校教師の数が、およそ40倍になってしまったという計算になります。
これは、ニュースなどで取り上げられることが増加したことが理由です。
その現状を学校や教育委員会が真摯に受け止め、詳しい調査を行うようになった結果、次々とその実態が明らかになったことが原因として考えられます。
つまり、学校や教育委員会が学校現場で起こっている問題を、今までは問題として見ていなかったということです。
そのために、発覚が遅くなっただけに過ぎず、ハラスメント行為は数多く存在していたと考えるのが自然といえるでしょう。
スクールハラスメントにはどのような事例があるのでしょうか。
スクールハラスメントの例
ここでは、スクールハラスメントの事例をハラスメント別にまとめてご紹介します。
セクハラの例
- 容姿や身体的特徴をからかう、卑猥な冗談を言う
- 身体を執拗に眺める、または業務や指導に関係のないボディタッチをする
- 食事やデートの誘いを電話やメールで執拗に行う
- 「異性関係がだらしない」などの性的な噂を流す
セクハラの例として、男性から女性への例を挙げましたが、これは女性から男性の場合においても同じことがいえます。
スクールハラスメントの被害報告の中でも最も多く、世に知られているのが「性的嫌がらせ」であるセクハラ被害となっています。
教師から生徒へのセクハラ行為が起こる原因は、様々あります。
そのうちの一つに、生徒が教師に対して抱いている敬愛や信頼が関係している場合があります。
敬愛や信頼を「一人の異性としての自分」に向けられていると勘違いし、恋愛感情を抱き始めるというケースです。
生徒からの教師に対する敬愛や信頼は、昔から存在するものです。
にも関わらず、恋愛感情として受け取ってしまうほどに、教師自身の自己肯定感の低さがうかがえるのかもしれませんね。
パワハラの例
- 大声で怒鳴ったり、周囲の物を殴ったり、投げたり、叩いたりする
- 指導上または教育上、必要のないことを行うように強要する
- 特定の生徒を攻撃することで、周囲に圧力をかけ、言うことを聞かせる
- 期間内に終わらない業務を押し付けて、できなかったことを執拗に責める
パワハラが行われる場所として多く報告されているのが、部活動ですよね。
特に、スポーツなどのように試合での勝敗により、大会の出場決定権が決まる部活動に多く起こりがちです。
中には、生徒が試合で勝利し、大会で良い成績を残してもらうために、良かれと思って強く言いすぎる。
または、高圧的な態度や行動につながってしまう場合も少なくありません。
悪気なく、むしろ良くしようと思った言動や行動が、パワハラという嫌がらせ行為だと解釈されてしまうのは、とても悲しいですよね。
普段から、自身の言動や行動が、相手にどんな印象を与えるのか考えて行うように意識することが、パワハラ被害をなくす第一歩かもしれませんね。
モラハラの例
- 「お前なんか何をやっても無駄だ」などの人格を否定するようなことを言う
- 特定の生徒に対して、必要な教育や指導を行わない(無視をする)
- 好き嫌いによって、意図的に生徒の学習法や成績評価を変える
- 特定の生徒が仲間外れになるように悪い噂を流す、洗脳する
相手の人格を否定したり、自身の趣向によって学習方法や指導法を変えることは、教師として行ってはいけない行為です。
むしろ、教師だけではなく、人として行ってはいけない行為だと思います。
自分の思い通りにならないからといって、自分の思い通りに周囲を動かすために、常識の範囲を超えた倫理に反する行動は、しないようにしてほしいですね。
対象者は様々、下記の場合もスクールハラスメントになります
生徒から教師に対する嫌がらせ
生徒が一人の教師に対して、クラスや学年単位で無視をしたり、悪い噂を流したり、過度に不評を言うなど、集団で責め立てることも立派なスクールハラスメントに該当します。
最近では、生徒から教師に対する嫌がらせも数多く報告されるようになりました。
ハラスメントは、大人から子どもに対してだけ行われることではなくなってきているのも事実です。
本来であれば、教師は、教育者として指導する立場です。
にも関わらず、指導される立場である生徒からハラスメントの被害を被るケースが事実として存在します。
そのようなハラスメントが起こってしまう現場の背景には、学校の環境や指導方法等が大きく影響していると考えられます。
保護者から教師に対する嫌がらせ
義務教育の現場である小学校や中学校では、以下のケースが特によく見られます。
保護者が学校側に対して、本来であれば問題のないことに対して過剰に反応したり、過度な要求を行うなどの行為です。
これらも立派な嫌がらせであり、スクールハラスメントに該当します。
最近では、共働き世代が増えたこともあり、母親が子育てに十分な時間をかけることができなくなっています。
そのため、自分達ができないことを、学校でやってもらおうと考える保護者が増えてきたように思います。
しかし、学校はあくまでも学問や道徳を身に付ける場所です。
家庭内で行う教育を補填する場所ではないことを、改めて理解してもらいたいですね。
スクールハラスメントの対処法
ここでは、スクールハラスメントの加害者とならないために、効果的な対処法についてご紹介します。
過剰に反応せず、冷静に対応するよう意識する
大声で怒鳴ったり、叱責すること、または周囲の物を殴ったり、投げたり、叩いたりする行為はパワハラに該当します。
上記のような言動、行動が起こるのは、1つのことに対して過剰に反応してしまうことが原因であるため、過剰に反応しないように意識することが重要です。
感情が揺さぶられてもそれを当人にぶつけるのではなく、あくまでも冷静に対応することを常に意識するように心がけるだけで、パワハラを未然に防ぐことができます。
また、自身の発言にどのような返答が返ってくるのかを事前に予測すること。
どのような態度や口調で伝えるのが良いのか、どのような伝え方をしたら相手に正しく伝わるのかを考えてから伝えるようにすること。
これらを心がけるようにすると、冷静に対応できるようになります。
指導上または教育上、不必要なことはしない(言わない、行動しない)
セクハラ、パワハラ、モラハラなどのハラスメント行為は、どれも指導上、または教育上必要ないものであるといえます。
それらの不適切な行為を行わないよう、教師として、教育を行う立場の人間として、常に正しい言動と行動を意識することが重要です。
また、生徒が不適切な行為をしてしまった場合には、間違った行動や認識を指摘し、正しい道に導いてあげることも欠かさず行うことが重要です。
不当な指導方法の変更や成績評価をしない
これらは、教師として当然してはいけないことです。
教師個人の好き嫌いによって、生徒への接し方や学習・指導方法を変えたり、成績評価を変えることは決して許されることではありません。
ただし、自閉症やアスペルガーなどの障がいや、その他に配慮すべき生徒に対しての適切な学習・指導方法の変更については除きます。
あくまでも教育上、不適切な対応だと判断される場合に限ります。
教師として、教育を行う立場の人間として考えた時に、当たり前のことを当たり前に行うことが一番大切ですね。
教師と生徒という立場を改めて理解する
上記に挙げたことと重複しますが、教師と生徒という関係性を改めて理解し、教育を行う立場の人間として、生徒を正しい道に導くことが重要です。
あくまでも、大人と子ども、社会的立場として上下関係が必然的にできているだけであり、教師と生徒は決して主従関係などではありません。
そのため、生徒を見下したり、生徒を奴隷のようにこき使ったりすることも、不適切な行為であり、そういった認識をすること自体も間違っています。
ここを都合よく解釈すると、セクハラやパワハラ、モラハラなどの言動や行動に繋がると考えられます。
今一度しっかりと立場を理解しておくことが重要です。
では、スクールハラスメントの解決方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
スクールハラスメントの解決方法
ここでは、スクールハラスメントの解決方法についてご紹介します。
署名活動を行い、訴える
スクールハラスメントの解決策として、自分の意志や考えを主張するために署名活動を行い、味方をつけた上で抗議するという方法があります。
教師の暴言を浴びせられたことで精神的な苦痛を受け、不登校となった経験を持つ大学生が7月17日、行政機関に対して教師によるハラスメント行為(スクールハラスメント)の相談窓口設置を求める署名活動を開始した。
署名活動の開始に先立ち、16日に文科省で記者会見した早稲田大学2年生の佐藤悠司さんは、かつて教師から受けた暴言が原因で不登校になっただけでなく、学校側はその事実を隠蔽(いんぺい)していると訴えた。
佐藤さんは中学2年生のときに通っていた東京都内の私立中高一貫校で、風邪をひいて学校を休んでいただけなのにもかかわらず、担任教師から執拗(しつよう)に電話で登校を促された。その不信感から、その担任が顧問の美術部から退部する意向を告げたが、担任から「お前は離婚家庭の子供だからだめなんだ」と罵倒され、精神的なショックを受けて学校に行けなくなった。
その後、学校側からは出席日数が足りないことを理由に、複数回にわたり転校を勧告された。佐藤さんや保護者が抗議すると、教師の暴言によって不登校になった事情が学校内で共有されていなかったことが発覚。
佐藤さんによると、校長は経緯の公表や再発防止に向けた対策を拒んだという。
佐藤さんは「いじめの相談窓口はあるが、教師によるハラスメントは想定していない。現状では、ハラスメントを受けた子供は泣き寝入りするだけだ。特に私立校は独立性が高く、外部から介入しにくい。実効性のある機関が必要だ」と訴えた。
(教育新聞)
上記の記事は、過去にハラスメント被害を受けたことにより、教師によるハラスメント行為の相談窓口設置を求めるために、署名活動を行った事例です。
また、今回の署名活動により、ネット署名サイトの「Change.org」に専用ページを開設し、7月17日~8月17日の1カ月間で8939人もの賛同者による署名が集まりました。
その後の動きについては記載されていません。
ですが、学校でのハラスメント行為が黙認されず、学校側がしっかりと被害者の立場に立った対応を行うことが当たり前になるように、佐藤さんは一生をかけて訴えかけていくのだろうなと思います。
学外の相談窓口を利用する
都道府県の教育委員会に設置されている電話相談や相談窓口を利用し、学校現場で起こっているハラスメント行為の実態を伝えることも重要です。
学校側に直接訴えるよりも、教育委員会にハラスメント被害の現状を訴え、具体的な対応や対策を求める方が、真摯に対応してくれる可能性が高くなります。
また、学校側にではなく、個人としてはどのように対処すれば良いのか、対応面や精神面のケアのために相談を行う場合は、都道府県の保健センターやサポートセンターを利用するのも一つの手段といえます。
スクールハラスメントを防止するためには、どうすればいいのでしょうか。
スクールハラスメントを防止するためには
スクールハラスメントを防止するためにはどうすればいいのかみていきましょう。
スクールハラスメントは、セクハラ・パワハラ・モラハラなどの嫌がらせ行為のすべてを含むハラスメントです。
これらをすべてなくそうとするのは不可能に近いかもしれません。
しかし、ハラスメント行為が引き起こされないように対策を練ることが重要です。
または、すでに起こっているハラスメント行為を少なくするためにも、学校側も防止策を講じるべきです。
学校側だけではなく生徒、保護者もハラスメントの加害者となりうることを意識して防止するよう努めることが重要です。