家事ハラスメント(カジハラ)とは、家事労働を無償で押し付ける社会行為のことを指しています。
これは、夫から妻へといった女性に対する家事強要だけではなく、妻から夫への家事のダメ出しや、姑から嫁への家事強要なども含みます。
そのため、家事ハラスメントは、異性同性関係なく、家庭内であればどこにでも起こりうるハラスメントなのです。
ここでは、家事ハラスメントが広まった背景や例に触れながら、原因や解決方法について、解説します。
家事ハラスメントが広まった背景とは?
2013年に和光大学教授の竹信三恵子氏によって「家事労働ハラスメントー生きづらさの根底にあるもの」が執筆されました。
この著書によって、家事ハラスメント(カジハラ)という言葉が世間に広く知られるようになりました。
この「家事労働ハラスメント」という言葉を生み出した竹信三恵子氏は、著書の中で以下のように語っています。
家事などの普通に暮らしていれば必然的に行うこととなる家事や育児、介護などの「暮らしの営み」における責任が、不当に過小評価されている。
それを主に担っている女性に対して、家庭責任を押し付けているにもかかわらず、その責任をあたかも「ないもの」として扱っていることを問題として取り上げています。
この著書をきっかけとして、家事ハラスメントとは何なのか、家庭内でよく起こる問題について焦点を当てて考えられるようになりました。
では、家事ハラスメントの事例についてみていきたいと思います。
家事ハラスメントの事例
ここでは、夫婦間でのハラスメント、姑から嫁への家事ハラスメントの事例についてご紹介します。
夫婦間でのハラスメント
- 「帰ってくるまでに家事は全て終わらせろ!」
- 「やり方が全然違う!やり直して!」
- 「何をやるにも雑なんだよ。」
- 「ちゃんとやることやってくれてるの?」
- 「何もたもたしてるんだよ。早くやれよ!」
上記のように、家事を強要する他、家事のスピードや家事のやり方などについて文句を言うことも家事ハラスメントに該当します。
嫁姑間でのハラスメント
- 「私はできてたのに、なんであなたはできないの?」
- 「主婦なら家事は完璧にできて当たり前。」
- 「我が家のやり方と違うわよ、やり直して。」
- 「家事は午前中には終わらせるものよ、早くしなさい。」
- 「あなたは本当に雑ね。これだから若い嫁は。」
上記のような発言は、世間ではよく知られている嫁いびりに該当するものですよね。
これらにおいても、立派な家事ハラスメントに該当します。
モラハラに発展する場合も少なくない
上記に挙げたような発言の他に、相手を否定し、精神的苦痛を与えるような発言をすることは、モラハラに該当します。
たとえば、「これだからあなたはダメなのよ」、「お前みたいに何もできない女をもらってくれるやつなんて俺くらいだぞ、感謝しろよ」などです。
家事ハラスメントが行われている場面では、モラハラに該当するような発言、行動もしばしば見られるようです。
家事ハラスメントが起こる原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
家事ハラスメントが起こる原因
家事ハラスメントが起こる原因として、以下が考えられます。
共働きが増え、家事を担う責任を押し付け合うようになった
昔は、女性は専業主婦として家庭を守るものという認識が強く、家事は妻が行うものだと考えられていました。
近年では夫婦間でも共働きが増え、家事を担う責任が妻だけのものではなくなりました。
しかし、昔の考えが根強く残っているのか、共に働いているのに、家事は妻がするものとして、全ての家事を押し付けることも少なくありません。
これは妻から夫への場合も当てはまりますが、家事を押し付けられた方は、なぜ共働きで同じ立場にいるのに責任を押し付けられるのかと不満を抱くようになります。
それによって仲違いに発展し、離婚などの問題へと繋がってしまうのでしょう。
相手がしてくれることが当たり前になっていて、感謝の気持ちを持たなくなった
相手に家事を押し付けることが日常化すると、家事をしてもらうことが当たり前になってしまいます。
本来であれば、家事は夫婦で担うべき責任であるため、自分の時間を割いて家事をしてくれたのであれば、そこは感謝すべきだと思います。
しかし、してもらえるのが当たり前だと考えてしまうと、感謝の気持ちを持つことができないばかりか、できていない面ばかりが目につくようになってしまいます。
そうすると、ますます、相手にこうしろ、ああしろと要求するようになってしまいます。
価値観の違いを共有していない、妥協できない
夫婦といえども、違う家庭で育った他人同士が同じ空間で生活するため、家事の仕方などに違いが見られるのはごく当たり前のことです。
しかし、その違いを理解せず、夫婦なんだから相手に合わせるのが当たり前、と考えてしまっている人も少なくありません。
そのため、「ここができてない」、「やり方が違う」、「なんでできないんだ」と相手を責めるようになってしまいます。
お互いに思いやりの気持ちを持てていない
感謝の気持ちを持てていない、ということと似ていますが、家事は本来、夫婦で担うべき責任です。
もし、相手が自分の代わりに家事をしてくれたのであれば、まずは感謝すべきです。
相手が疲れている、体調が悪い等の場合には、思いやりの気持ちを持って家事をするのが当然だと考えるべきです。
そういったお互いを思いやる気持ちもなく、家事をする責任を互いに押し付けあってしまうため、すれ違いが起こっていまいます。
仕事の忙しさ等の要因によって、精神的余裕がない
上記に挙げたような原因の元になりうるものとして、精神的余裕のなさが挙げられます。
仕事などで忙しくなると、身体的疲労も溜まり、家事が疎かになりがちです。
そして、身体的にも精神的にも余裕がなくなり、余裕がなくなると相手を思いやる気持ちや感謝の気持ちもどんどん薄れてきてしまいます。
そのため、家庭内まで手が回らなくなり、お互いに家事の責任を押し付け合うことにも繋がります。
では、家事ハラスメントをなくすためにはどうすればいいのでしょうか。
家事ハラスメントをなくすためには?
家事ハラスメントをなくすための方法を紹介します。
家事ハラスメントをなくすためには、まず、お互いが家事を担う責任を持っていることを正しく理解することが重要です。
また、相手に対しての思いやりや感謝の気持ちを持てない原因として、身体的または精神的疲労が考えられます。
そのため、自分での身体的または精神的ケアを欠かさず行いましょう。
適度にストレス発散をすることで、精神的余裕を取り戻すことができ、思いやりや感謝の気持ちを持つことができるようになります。
お互いがお互いを思いやって、二人で助け合いながら家事を分担すること。
家事をしてもらったら感謝の気持ちを伝えること、してくれたことを互いに褒め合うことが、家事ハラスメントをなくすためには効果的な方法だといえます。
もし、それでも改善されない場合には?
もし、上記の方法を行っても改善されない、または相手に理解してもらえず、継続的に精神的苦痛を与えられる場合もあるでしょう。
その場合は、「その対象から離れる」ことが、現状を解決するために最も効果的な方法です。
モラハラと同じく、相手と離れる決断を下すことは困難かもしれません。
ですが、上記の方法を試してみても変化がない場合、相手の価値観や考え方が根本的に合わないことがハラスメントの原因だと考えられます。
そんな、一向に改善する気配のない相手の改善を願って現状に耐え続けるよりも、一刻も早くその対象から離れて、自分自身を守るために行動することが大切です。